「え~!それで今日全教科受けてきたの?」
「うん。さすがにちょっと疲れたね」
公務で試験を受けられなかったので、朝霧と一緒に、土曜日だけど学校に行ってきた。・・・朝霧は初日は受けたので二日分だったけど。
「それはお疲れさまでした」
「いいえ」
互いにお辞儀し合って、微笑む。・・・昨日までの苦痛な数日を思えば天国のようだ。今日はヘンケル殿下は国を視察・・・というのは名目上で、婚前旅行だよ。誰が見てもそう思う、きっと。まあとりあえずしばらくは自由の身だと思ったら、だんだん鋭気がよみがえってきた。
「晩餐会の時、凄く素敵だったよ。明るい色も似合う、とっても」
そう言っていただけると、嬉しいです。
「機嫌はかなり悪そうだったけど」
やっぱり気づかれていたか。
「それは言ってくれるな、思い出すだろ」
「そう言われると尚更気になるけど・・・もう婚約したんだからね」
ああ、そうか。有紗さんのことを気にしているのか。確かに彼女も悩みのタネだけど、それ以上に。
「愛し合うことって、素敵なことだよな」
「え?」
顔を上げた頬に軽いキス。話が分からない深雪は、ただただ不思議そうにしているけど、イマイチよく分からない結婚間近の二人に加え、別れようかと言っている朝霧、夢のために一旦距離を置く兼古先輩たち・・・。あ~、俺たちは幸せだなって改めて感じるんだ。大事にしていきたい。
・・・ちょっと久し振りに会ったけど、深雪はいつもと変わらない笑顔で、安心したんだ。