と言いつつ、あれから希とは会っていないわけだけど、プレゼントを何にするかはかなり絞り込めた。いつもはなかなか眠れない、と言っていたから、眠れるようなグッズにしようと思う!
というわけで放課後、若菜に買い物に付き合ってもらった。冬場は制服の上にコートを着るので、そのまま出かけてもクリウスの学生だということで注目を集めずに済む。
「そういえば、深雪と出かけるのって久し振りじゃない?」
と言われて気がついた。確かに、若菜とは学外ではあまり会わない。それはやっぱり、私には部活があるので帰る時間がバラバラになるという事情が大きい。でもだからと言って希と出かけているわけでもなく・・・というか、デートなんて随分していないことに気づいてしまった。
「でも先輩とこんな風に街を歩いたら、大変なことになるよね。深雪は見せつけたいとか思っちゃう?」
そんなことあるわけない!一緒に街を歩きたいとは思うけど、誰にも気づかれたくない。
「そんなの、外国にでも行かない限り無理だよ。この国の人はみんな、財務長官様に興味津々だもん」
ほら、あれ、と若菜が指差す先には、希のCMに足を止めている人たちがたくさんいた。
「彼女のことを思ってやっているとしたら、いたたまれないわよね」
「いやだ~。彼女がいることすら信じたくない!」
「でももうすぐ誕生日でしょ?彼女と一緒にお祝いするんじゃない?」
「プレゼントはお気持ちだけで結構です、だなんて・・・、でももし贈るとしたら、何にする?」
「そうだなぁ・・・、やっぱりケーキは手作りしないとね!」
「そして、あ~んって、食べさせてあげるとか?」
ぶるん、ぶるん、ぶるん。あ~、やっぱり、プレゼントは手作りのほうがよかったかな?でもケーキは上手に作れないよ。しかも、希はいつもおいしいものをたくさん食べているから、食に関しては絶対に敵わない。・・・でも、希はあんまり甘いものは得意ではないので、そんなには喜ばないと思う。
「気にしなくていいよ。深雪にしか知らないことだって、いっぱいあるんでしょ?」
うん。でも朝が半端なく弱いことは、本人の名誉のためにも、少し弱いくらい、の表現にとどめておく。
そして私たちは雑貨屋さんに入ってみたのだけど、安眠グッズはいろいろありすぎて迷ってしまう。アロマキャンドルはすでにたくさんあったし、CDはあまりにもありきたりすぎる・・・何せ希の友人はヴァイオリンの名手だもん。でも、普通の音楽ではなくて環境音楽的なものなら・・・ただし希は山や森は苦手だそうなので・・・海!海はいいね!
「え~、これかわいすぎない?」
「ううん、このギャップがいいのよ!」