1/2 (月) 14:00 新婚滞在

これまで十二分に頑張ってきたから、新婚旅行は、ただただのんびりしたい。よって、あちこち動き回るのではなく、10日間、一箇所に腰を落ち着けて、気が向いたら出かける感じにした。

「でもずるいね。貴くんは仕事であちこち行ったのかもしれないけれど、私はまだあんまり外国に行ったことがないんだもの」

「僕のことは別に気にしなくてもいいよ。行ったことがある場所でも、舞と見る景色はまた違うから、素直に行きたいところを言って」

たまには全面的に舞の希望を叶えてあげたい。そして決まった滞在先は、とある芸術の都だった。

「都会だからって、落ち着かないってことはないと思うの。前から行ってみたかったというか、住んでみたかったの。10日間あったら、少しはその気になれるかと思って」

いいよ。確かに、この街はおしゃれで、一つ一つの風景が芸術的で、活気に満ち溢れている。もちろん僕自身はよく知っている街の一つだけど、こうして二人で歩いていると、新鮮な驚きの連続である。

「貴くん、あれ食べてみる?」

「え~、何か凄い色をしているよ。おいしいのかな?」

「ネットの情報によると、とても評価が高いのよね。ほら、行ってみよう」

うん。いつもよりも数倍は目を輝かせている舞を見ると、本当に来てよかったと思える。彼女も一人で公務に出ることが増えてきて楽しんでいるようだけど、少々頻繁すぎる気がする。それでも基本は僕の仕事に合わせてくれているので、僕が帰ったときにはいつも笑顔で迎えてくれるし、僕のことを気遣ってくれる。彼女みたいな素敵な人に出逢えて、僕は幸せだ。

「あ!おいしい~!!!」

「ホントだ、おいしいね、これ」

喜ぶ彼女を見ていると、それだけで嬉しくなってくる。今回の旅行というか滞在は、ただただ彼女のために尽くしたい。例の出来事が起こるのか…は分からないけど、この街にいる限り大丈夫だろう。彼女がいると、僕も穏やかな気持ちでいられる。まだ誰にも邪魔されたくない。

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