6/8 (木) 17:00 後輩の成長振り

もちろん部活では、昨夜の兼古先輩の話題で持ちきりになっていた。

僕も類に漏れず夜中にビデオで見たのだけど、感想を直接伝えたかったので、そのままの勢いで先輩に電話してしまった。もう撮影は終わったそうだけど、すでに次なる仕事に頭を悩ませているとか。長くは話せなかったけど、めっきり役者づいていて、ますます惚れ直してしまった。また今度食事をする約束をしたので、楽しみだ。

部員のみんなへのメッセージも預かったので伝えて、僕たちも負けていられないと練習再開。

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吉岡:(激しく)どうして沢渡先輩はそう落ち着いて見ているだけなんですか?あなたは生徒会長でしょ!

沢渡:そうだけど、僕にはみんなに命令をするような権限はないんだ。みんなと同じただの学生だからね。

吉岡:(胸倉をつかんで)それは無責任すぎはしませんか?こんなに学校が荒れた状態で、いいとは思っていないでしょう?

沢渡:僕にたてつくのは間違ってるよ、吉岡くん(吉岡の手首をつかんで離し、襟元を直す)。それじゃあ、校則を撤廃した意味がないよ。みんな自分勝手に行動しておいて、手がつけられなくなったら僕に助けを求めに来る・・・結局誰かに管理されたいんじゃないか。自由になりたいのか、なりたくないのかどっちなんだ!

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吉岡とは張り合うシーンもある。彼の役どころとしては、校則がなくなったことで最初は非常に好き勝手にするが、このままではいけないと徐々に他のみんなをまとめていこうとする。ところが他の仕切りたがる人とぶつかったりしてなかなか上手くいかず、僕に助けを求めてくるといったところだ。

脚本に関してはかなり意見してくれて、僕の役は冷静すぎるとはっきり言ってのけたくらいだ。おかげで、建設的ながらも激しい議論をしたこともあった。

「先輩。胸倉をつかむのはちょっとやりすぎだと思うんですよ。机をバンと叩くくらいでいいですか?」

いくら羽目をはずしたとしても、先輩にはそこまでしたくない、と。・・・どうだろう?

「一回やってみるか」

僕は椅子に座り直し、吉岡がバンと机を叩いて台詞を言ったあと、立ち上がって彼の肩をポンポンと叩いてみた。

「そのほうがいいわ」

村野さんが言ったので、そこはそうすることにする。

思ったことはすぐ口にしてくれるから、僕も逆にやりやすい。変なしがらみもまるでなかったかのように、すっかりかわいい後輩になってくれている。もう気にしてないと言ったら嘘になるけど、危険性はかなり低くなったと思う。深雪は信じられないといった様子で見ないフリをしていたけど、結果的に話す時間をたくさん持ったこと、特に気にかけてあげたことが功を奏したと言っていいだろう。一年の間ではもちろん、二、三年の間でもなかなか評判がよくなってきているから。

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