5/26 (金) 21:00 お祝いの言葉

もちろんそんな僕の様子を知っているのはごく一部の身内だけなので、晩餐会は一通り終わり、隣の部屋で行われる歓談パーティーになると、一段と盛り上がりを見せ始めた。

有紗さんはピンクの光沢があるドレスを着ていて、それはそれで似合っていたし、見栄えのよいヘンケル殿下との仲むつまじい様子は、幸せの絶頂といったところだ、傍目から見ると。・・・この数日本当に神経がブチ切れそうだけど、実際に話したのは結城と朝霧にだけ。こんな状況で深雪に電話すると返って問題を引き起こしそうなので、それは控えている。・・・試験を受けに行くことが出来ればどんなに幸せだっただろうか。 Continue reading “5/26 (金) 21:00 お祝いの言葉”

5/25 (木) 14:00 怒りのオーラ

婚約の儀のためにメイクを施している最中、誤って筆を一本落としてしまった。途端に目をお開けになった殿下からジロリと刺すような視線をいただいてしまい、体の芯まで凍りつきそうになる。

「失礼いたしました」

それには答えず黙って目をお閉じになり、とりあえずはホッと胸をなでおろす。殿下どうなさったんですか?怖すぎますよ。 Continue reading “5/25 (木) 14:00 怒りのオーラ”

5/24 (水) 21:00 エレガントな客

お昼過ぎにリディア国王陛下ご一行がお見えになり、迎賓館へとご案内した。去年の春に江口陛下のお供でリディア国を訪れたことがあり、一度お目にかかったことがある・・・その時に知り合ったんだろうな。だったら二股かけられていたことにもなるじゃないか。いや、響殿下の葬儀に参列していただいたから、その時かな?

とにかく確かにハンサムな容貌を持つヘンケル殿下はプレイボーイだと、各国王族の間では噂されている。やることなすこと派手で気取っていて・・・すでにさっきから有紗さんと寄り添ったまま離れない。勝手にしてください、という感じだけど。 Continue reading “5/24 (水) 21:00 エレガントな客”

5/23 (火) 19:00 どんなに着飾っても

僕はあらゆる状況を想定しているつもりなんだけど、予想だにしないことが起こることも事実。しかも大部分はこの方が引き起こしているから、とても歓迎する気にはなれない。もっと嬉しいハプニングがあったっていいだろうに。

「ちょっとよろしいかしら?」

 誘われるまま空いている部屋へと一緒に入る。久し振りにこうして至近距離で見ると、化粧が濃くなったんじゃないか?と思う。今となればどうしてこの方と付き合っていたのだろうと不思議に思えるくらいだ。その上まだ僕を嫌いにさせるつもりですか? Continue reading “5/23 (火) 19:00 どんなに着飾っても”

5/22 (月) 17:00 ためいき

「はぁ・・・」

今日一日で何度ためいきをつかれたことか。気づいていらっしゃいますか、殿下?

今週はリディア王国の国王陛下ご夫妻と、ご子息でいらっしゃるヘンケル皇太子殿下がお見えになります。このヘンケル殿下が有紗様の恋人で、このたび婚約なさる運びになりました。もちろん有紗様とはもう縁を切っておいでですが、未だに心を乱されるご様子です。私も有紗様とヘンケル殿下のお話はつい最近うかがいましたので、大変驚いております。いつから付き合っていらしたのか・・・どう考えてもその期間は短いはずです。 Continue reading “5/22 (月) 17:00 ためいき”

5/21 (日) 23:00 確固たる信念

いつ言おうか迷っていた。でも今、初めてのドラマの撮影が佳境に入っているので、とにかく早めに言ってしまいたかった。

「もしもし、俺」

「今日はもう終わったの?」

「うん・・・今から会えないかな?」

「え?今から?課題に取り掛かっている最中なんだけど・・・。今日じゃないとダメ?」

うん、今日じゃないと・・・。しかも明日も朝が早いんだよな。 Continue reading “5/21 (日) 23:00 確固たる信念”

5/20 (土) 21:00 試験前

「え~と、これ教えて」

深雪が指した問題を、僕が読んでいく。

これが学校の宿題ならともかく、家庭教師の先生の宿題だなんて、深雪もよく平然と言えたものだよ。二人で会っている貴重な時間なのに、勉強に費やさなければならないなんてもったいない。でも本当だったら、家庭教師になんて任せたくないよ。俺も一度会ったことがあるけど、せめて女の先生にしてくれよな。他人の気も知らないで。 Continue reading “5/20 (土) 21:00 試験前”

5/17 (水) 23:30 大きな愛に包まれて

真夜中・・・。沢渡が急に部屋にやって来て、俺にすがりつくように肩に顔を埋めた。大体の事情は加藤から聞いているから、想像はつく。部屋に帰ったらご両親から手紙の返事が何らかの形で届いていた、でも真夜中だからどうすることも出来なくて、俺の部屋に来た、と。 Continue reading “5/17 (水) 23:30 大きな愛に包まれて”