1/15 (日) 23:00 決意

実は、プライベート用の携帯電話を見ていない。多分、深雪を始め、先輩方からも連絡が入っているだろうとは思うのだけど、見てしまったらまた泣いてしまいそうで。

深雪も悲しんでいるに違いないし、僕のことを心配してくれているに違いない。だけど、構ってあげられるだけの心の余裕がない。

財務大臣に就任して間もないのに、皇太子の肩書きまで増えるとは。しかも皇太子に即位するときは、響殿下が国王陛下になられるときで、僕のことを温かく見守っていてくださるはずだった。…なのに現実は厳しい。

でも、殿下が新婚早々お亡くなりになるという悲しい出来事に比べれば、僕のことなんてたいしたことない。だから、頑張らなくては。今は、プライベートよりも、仕事に集中するときであって、…そのほうが、余計なことを考えずに済む。

疲れているのに、どうにも気持ちが高ぶって、眠れそうにない。そしてまた、僕はピアノを弾いていた。重く響き渡る和音が、ゆっくりと展開していく様子に合わせて、僕自身もゆっくりと思考を展開させる。

運命は決まっているという人がいる。幼くして入宮したことも、それにより荒んでしまった僕を助けてくれる響殿下や結城に出逢ったことも、朝霧という親友を得たことも、学校で深雪に出逢ったことも、僕一人なんかの力ではどうにもならない大きな力が働いたことによって、起きたことだと思っている。…だから、殿下がお亡くなりになったということも、僕には必然的なことに違いない。

大切な人との出逢いの度に、僕は一つずつ成長してきた。そしてこの別れのときも、僕は成長するべきなのだ。…僕はまだ若いから、別れの場面にそれほど会ってこなかったのだろう。今後、そういうことは増えてくるに違いない。

その中で僕がすべきことは…、結城にも言われたように、僕らしく生きていくことなのだろう。思い起こせば、生前、殿下からもそう言われていた。いつも殿下の背中を拝見していたから、僕は殿下みたいになりたいと思っていた。そうではなく、僕にしかなれない僕になるのだ。

…すでに、今までたくさんのことを教えていただいてきた。だから、今はそれを実践するときだ。他の誰でもなく、僕が皇太子になるということは、きっと僕にしか出来ないことがあるからだ。その使命を果たさなければならない。

自分を見失ってはいけない。自分を強く持って、前に進んでいかなければならない。殿下はいつもそばにいてくださる。結城もフォローしてくれる。だから、何も怖くない!

すると、殿下のリングがまたキラリと光ったように見えた。やっぱり、これでいいんですね、というか、これがいいんですよね。

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