朝。出がけに、机の上に置いておいたはずのコミックがなくなっていることに気がついた。
「舞、ここにあった本知らない?」
「いえ、知らないわ」
じゃあ竹内かな?すると、
「昨夜私が退がらせていただきました時には、置いてありましたよ」 Continue reading “5/11 (水) 22:00 謎”
小説の部屋
朝。出がけに、机の上に置いておいたはずのコミックがなくなっていることに気がついた。
「舞、ここにあった本知らない?」
「いえ、知らないわ」
じゃあ竹内かな?すると、
「昨夜私が退がらせていただきました時には、置いてありましたよ」 Continue reading “5/11 (水) 22:00 謎”
水曜日には部活が休みに入ってしまうので、今日は頑張らなければ・・・美智も殺気立っている。テストで休みになってしまうのがもったいないくらい、今回の脚本はよくできていると思う。加えて、沢渡がすでに気合い十分で体当たり演技をしてくれているから、俺としてもそれを受け止めるような演技を心がけるようにしている。これは充実した時間だ。 Continue reading “5/10 (火) 17:00 相乗効果”
部屋に帰ったときに彼女が迎えてくれる、それがこんなにも幸せなことだとは思ってもみなかった。
「お帰りなさい」
「ただいま」
そして竹内が諸項目を手短にまとめて言い残し、退がっていく。 Continue reading “5/9 (月) 23:00 僕たちが…”
気持ちがぐちゃぐちゃになっている。…僕のほうにも非がある?僕はずっと、平凡でいいから、有紗さんと一緒の時間を過ごして一緒に感動できたらいいと思っていた。同じように少し心が寂しい人間同士、お互いの空白を埋め合っていければいいと思っていた。なのに、有紗さんの高慢な態度は変わらず、距離はある程度以上保たれたままだ。…でも有紗さんから僕のことが分からないと言われたことは、少なからずショックだった。僕の気持ちは何度となく伝えてきたはずなのに、伝わっていなかったとは…。 Continue reading “5/8 (日) 22:00 何故?”
今日の部活の時間は、必要以外ずっと目隠しをして過ごした。おそらくみんなは戸惑っていたのだろうけど、僕にはそれを肌に感じるだけの鋭い感覚はまだないようだ。とりあえず練習をこなすことはできたのだけど、出番以外で孤独を感じたことのほうが印象的だった。朝霧が側にいないときには、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。…隣に誰かが座ってもまずそれが誰なのか分からないし、ましてや自分から話しかけようという気などさらさら起きなかった。慣れていかなければならないとは分かっていても、今日はとても疲れてしまった。 Continue reading “5/7 (土) 23:30 壊れかけのハート”
今日は朝霧と一緒にドクターの元に行き、不治の病についてのリサーチを行った。改めて見てみると、朝霧は細身で繊細なイメージだから病人役にはピッタリだと思う… なんて冗談で言ってみたら、実は僕もそう考えていたんだよ、と真顔で返されてしまった。
…そうそう、朝霧の怒りはやや収まったみたいだ。今度は全国大会で優勝しなければならないのだから、僕と川端さんが綿密に打ち合わせをするのはやむを得ないことだし、そもそも僕と有紗さんがどんな付き合いをしているかを朝霧が詳しくしているはずなどないのだから。…今は舞台のことを中心に考えていきたい。 Continue reading “5/6 (金) 22:00 生きることと死ぬこと”
役作りのためにまた宮殿に戻ってきている。実家にもピアノがあるが、目隠しをしたまま弾くととんでもない演奏になるので聴かせられない。また、生活部分の練習にも実家は狭くて危険だ。
そして今夜は加藤に付き合ってもらうことにした。
「自室は勝手が分かっていらっしゃるので、よろしければ他の場所にお連れしてもよろしいですか?」 Continue reading “5/5 (木) 21:30 訓練”
僕自身も動揺したことに驚いたけれど、
「だからと言って、朝霧がそんなに怒ることないだろ?」
昨日の帰りからず~っと怒っているから、逆にこっちは気持ちが冷めてしまった。…朝霧とは何度かケンカをしたけれど、いつも彼のほうが折れてきた、なのに、
「今回は明らかに君が悪い。僕は許さないからね」 Continue reading “5/4 (水) 16:30 非難の目”
問題はピアノ。昨夜朝霧と相談したのだけど、先に曲を決めたほうが練習しやすいと思ったので、部活の後部長と兼古先輩に良さそうな曲を聴いてもらうことにした。…ただ、練習してもうまくいかなければ、弾くマネだけにさせてもらう。そのためにも、他の部員には内緒にしておきたい。
ストーリーは事故で失明してしまい生きる望みを失った青年が、妹からプレゼントされたピアノをきっかけに再び生きる決心をするというもの。そのラストシーンで演奏する曲なのだから、彼の心境を表すような前向きで明るい曲がいいと思う。 Continue reading “5/3 (火) 17:00 プチ演奏会”
編集の時に何度も観たはずなのに、川端さんの演技にはいつも引き込まれてしまう。僕たちの作品は、3年の先輩方に満足していただけたみたいだ。僕としては、今回の撮影に当たって演じる側ではなく指示をする側に回ったことが、新たに役に向き合うことが出来るいいきっかけになったと思う。あっという間だと思っていた1年の間にも、僕は先輩からたくさんのことを学んでいた、それを後輩たちに伝えていかなくては、という責任も感じられるようになった。…先輩になるって、こういうことなんだね。 Continue reading “5/2 (月) 18:00 新作に向けて”