「な~にイラついているんだ、このバカ」
いきなりその言葉は何!?と思いつつも否定はできず、僕は素直に結城をソファーに迎えた。結城は殿下の婚約発表のおかげでとても忙しいはずなのに、わざわざ来てくれたのだ。 Continue reading “6/14 (火) 23:00 You can do it!”
小説の部屋
「な~にイラついているんだ、このバカ」
いきなりその言葉は何!?と思いつつも否定はできず、僕は素直に結城をソファーに迎えた。結城は殿下の婚約発表のおかげでとても忙しいはずなのに、わざわざ来てくれたのだ。 Continue reading “6/14 (火) 23:00 You can do it!”
クリウスの周辺は相変わらず賑やかだけど、演劇部は間近に迫った地区予選に向けて集中力を高めている。・・・特に沢渡は全力を注ぎ込んでくれているみたいだから、邪魔しないようにしないと。
やっぱり、学校を休んでいる間に沢渡は少し変わったと思う。初日は玄関で彼が来るのを待っていた。そのときから眼光が鋭くなっていたことに気づいていたが、他の生徒からいろいろと声をかけられたときあっさりを受け流すようになったことからも、強さが感じられた。一つ苦難を乗り越えて成長した姿をそこに見た気がした。 Continue reading “6/13 (月) 18:30 困り事”
「沢渡、起きているなら練習に付き合って」
よく眠れないままぐだぐだしていたら、同室の朝霧から声をかけられた。この場合練習とは、演劇の、ではなくヴァイオリンのだ。やはり夏のコンクールのためかなり練習しているようで、今回の合宿にはヴァイオリンを持参していた。昨夜もこっそり外に出て行ったままなかなか帰ってこなかった。
「うん、いいよ」 Continue reading “6/12 (日) 6:00 関連性”
地区予選まであと一週間、この週末の合宿で今までの遅れを取り戻すことになる。僕は帰国するまで他の部員たちとはほとんど連絡を取っていなかった。でも僕は僕なりに自分の役のことについては大いに考えていたので、それを一昨日からぶちまけている。僕としては、僕にしか知り得ないリアルさを全面に出し、それに部長から修正を加えてもらうことで、作品として仕上げるということを考えたのだ。 Continue reading “6/11 (土) 22:00 焦り”
「普通そんな、会見の途中で改心したりする?」
打って変わって朝食の最中、舞はいつものように「意見」してきた。
「だから悪かったって言ってるじゃないか。このところ考えなければならないことが多すぎて・・・、でも一番大切なことを考えていなかったみたいなんだよ。それに気づいたのがたまたま会見の最中だったというだけで・・・、結婚前に気づけたわけだからよかったと思ってよ」 Continue reading “6/10 (金) 7:30 弱み”
「本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本日、私響貴久は、こちらの杉浦舞さんと、両陛下お立ち会いのもと、婚約の儀を執り行いましたことをご報告させていただきます。なお結婚の儀は10月15日の予定です。国民の皆様には私ども二人を温かく見守ってくださいますよう、よろしくお願いいたします」 Continue reading “6/9 (木) 23:00 婚約会見”
騒ぎが起こるといけないので4限目の授業の途中でクリウスに入り、折角なので一緒に校内を歩いてきた。あの頃と比べるといくつかの建物が新しくなったり改築されたりしているが、僕たちが使っていた校舎はそのままだった。・・・懐かしい。そして3年生の時の担任の先生もまだいらした。 Continue reading “6/8 (水) 13:30 事前確認”
予定が狂う一日だ。天候不順で交通機関に遅延が出るやら、話し合いがまとまらないやら、頼んでいたものが届かないやら・・・。それでも何とか仕事を片付けて宮殿へ戻り、早足でターボリフトに乗り込み、医療室へ向かう。早く・・・早く・・・、待っている時間がまどろっこしい。
「お疲れさまです、殿下」
ドアが開き医療室へと足を踏み入れると、沢渡くんが立ち上がって僕に会釈をした。・・・でもそれは前にもあったことだ。まだ信じられない。 Continue reading “6/7 (火) 22:00 目覚め”
昨日結城が一足早く帰ってきて、経過を報告してくれた。
「もう大丈夫だ。ただ、急にいろんなものを見ると神経に負担がかかるので、少しずつ慣らしていくんだそうだ。それでも明日には帰ってくるんじゃないか?」
よかった。これで安心して婚約会見もできるというものだ。・・・彼の今後のためにも、結婚までの一連の流れは見せてあげたいと思っている。沢渡くんはどんな人と結婚するのかな? Continue reading “6/6 (月) 23:30 いつもの・・・”
舞のご両親と一緒に夕食をとった後、僕たちは夜の街を歩いていた。・・・少し酔いも醒ましたくて。
「高校を卒業してから随分経ったよね。・・・どう?長かった?」
「そんなことない、あっという間だったわ。大学生の時は結婚のことなんて全く考えられなかったし、就職したら新しい環境に慣れるので精一杯で、でも少し慣れてきたと思ったら更なる仕事が上から渡されて、バタバタしているうちにこの春を迎えてしまったという感じよ。でも私としてはできる限りのことはしたつもりだから、悔いはないわ」 Continue reading “6/5 (日) 23:00 夜の散歩道”