8/11 (木) 23:30 宮殿にて

部長と兼古先輩は、沢渡先輩のお見舞いのために一度宮殿に来たことがあるという。

「でも、あの結城さんの迫力は凄いからな、圧倒されないように」

その名前は、私も何度か沢渡先輩の口から聞いたことがある。先輩を育ててくれた人で、一番信頼している人だって。どんな人だろう?兼古先輩がそう言うくらいなのだから、よっぽどなのだろうけど、どんな風に? Continue reading “8/11 (木) 23:30 宮殿にて”

8/9 (火) 23:00 緊張の一瞬

とりあえず全て終了させ、僕たちは機上の人となっている。この一週間は本当にスケジュールが立て込んでいて大変だった。しかし、昨夜の殿下のお言葉から察するに、帰国後も以前よりは忙しいことになりそうなので、今は少しでも眠っておくことにしようかと思っていたら、殿下がまたも、大事な話があるとおっしゃる。 Continue reading “8/9 (火) 23:00 緊張の一瞬”

8/8 (月) 23:30 理性と感情

しかし、今日の殿下は少なからず沈んでいらした。貿易に関することであれこれと難しいことを言ってくる人がいて、さすがの殿下もかなり気を揉まれたご様子。・・・いつも落ち着いていらっしゃるように見える殿下にも、喜怒哀楽や体調の善し悪しがあることは当たり前なのだけど、それがあまりに些細な変化なので、今回ご一緒させていただいてやっと気づけるようになった。今までは殿下に同行させていただくとなると、粗相がないようにと自分のことを考えるだけで精一杯だったのだけど、今回は殿下のことをよくよく観察させていただくことが出来た。 Continue reading “8/8 (月) 23:30 理性と感情”

8/7 (日) 8:30 会いたい気持ち

朝起きて身支度を調えると、殿下はすでに朝食を取りにレストランに行かれているとのこと。・・・本当に殿下はいつお休みになっていらっしゃるのか。

そして僕も最上階にあるレストランに向かうと、・・・殿下はお一人ではなかった。向かい側の女性はどなただろう? Continue reading “8/7 (日) 8:30 会いたい気持ち”

8/6 (土) 22:00 白い炎

それは胸が張り裂けそうになるくらい悲しい話だった。ある女の子が大切なものをなくしてしまう。それをきっかけに彼女は人生の全てを捨て、それを求めて彷徨う毎日を送る。周りの人は最初彼女を心配するが、やがてだんだん彼女から離れていってしまう。追い詰められた彼女は、そのうち何を求めているのかすら分からなくなって、その場にうずくまってしまう・・・。 Continue reading “8/6 (土) 22:00 白い炎”

8/5 (金) 21:30 魂胆

殿下がアイツ・・・とおっしゃっていたのはモーリス殿下のことだったようで、もともと響殿下とお二人で昼食を取られる予定にはなっていたそうだけど、それが夕食に変更になった上、急に僕も呼ばれることになったのだとか。

“君はどうして急に、こんなことを言い出したのかな?僕にだって予定があるんだよ” Continue reading “8/5 (金) 21:30 魂胆”

8/4 (木) 16:00 移動の車中にて

殿下へは、外国にいるのにホーンスタッドから結婚の儀に関する打ち合わせが追いかけてくる。移動中、殿下とあれこれお話しさせていただけると期待していた僕としては、それが残念でならない。しかしその分、

「沢渡くんは、代わりに議会のフォローをよろしくね」

とお願いされたので、僕はパソコンとにらめっこ・・・のはずが、電波状態がよくない。電車の行く手はトンネルに次ぐトンネル、となると、こちらで仕入れた新聞を読むしかない。 Continue reading “8/4 (木) 16:00 移動の車中にて”

8/3 (水) 23:00 妥協点

前回殿下に同行させていただいた時には完全に秘書としてだったが、今回は次期皇太子として、また次期財務長官として、いくつかの場で紹介していただけることになった。

「先に言っておくけど、お若いですね、などと言われた時に、わざわざ知識をひけらかすようなことを言ってはいけないよ。かと言って、まだまだ未熟者ですが・・・などと謙遜してもいけない。相手を褒めたり、当たり障りのない話題を提供したり、自然な形で話の矛先を違う方向に向けさせること。最初が肝心だから、頑張って」 Continue reading “8/3 (水) 23:00 妥協点”