6/11 (土) 22:00 焦り

地区予選まであと一週間、この週末の合宿で今までの遅れを取り戻すことになる。僕は帰国するまで他の部員たちとはほとんど連絡を取っていなかった。でも僕は僕なりに自分の役のことについては大いに考えていたので、それを一昨日からぶちまけている。僕としては、僕にしか知り得ないリアルさを全面に出し、それに部長から修正を加えてもらうことで、作品として仕上げるということを考えたのだ。 Continue reading “6/11 (土) 22:00 焦り”

6/10 (金) 7:30 弱み

「普通そんな、会見の途中で改心したりする?」

打って変わって朝食の最中、舞はいつものように「意見」してきた。

「だから悪かったって言ってるじゃないか。このところ考えなければならないことが多すぎて・・・、でも一番大切なことを考えていなかったみたいなんだよ。それに気づいたのがたまたま会見の最中だったというだけで・・・、結婚前に気づけたわけだからよかったと思ってよ」 Continue reading “6/10 (金) 7:30 弱み”

6/9 (木) 23:00 婚約会見

「本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本日、私響貴久は、こちらの杉浦舞さんと、両陛下お立ち会いのもと、婚約の儀を執り行いましたことをご報告させていただきます。なお結婚の儀は10月15日の予定です。国民の皆様には私ども二人を温かく見守ってくださいますよう、よろしくお願いいたします」 Continue reading “6/9 (木) 23:00 婚約会見”

6/8 (水) 13:30 事前確認

騒ぎが起こるといけないので4限目の授業の途中でクリウスに入り、折角なので一緒に校内を歩いてきた。あの頃と比べるといくつかの建物が新しくなったり改築されたりしているが、僕たちが使っていた校舎はそのままだった。・・・懐かしい。そして3年生の時の担任の先生もまだいらした。 Continue reading “6/8 (水) 13:30 事前確認”

6/7 (火) 22:00 目覚め

予定が狂う一日だ。天候不順で交通機関に遅延が出るやら、話し合いがまとまらないやら、頼んでいたものが届かないやら・・・。それでも何とか仕事を片付けて宮殿へ戻り、早足でターボリフトに乗り込み、医療室へ向かう。早く・・・早く・・・、待っている時間がまどろっこしい。

「お疲れさまです、殿下」

ドアが開き医療室へと足を踏み入れると、沢渡くんが立ち上がって僕に会釈をした。・・・でもそれは前にもあったことだ。まだ信じられない。 Continue reading “6/7 (火) 22:00 目覚め”

6/6 (月) 23:30 いつもの・・・

昨日結城が一足早く帰ってきて、経過を報告してくれた。

「もう大丈夫だ。ただ、急にいろんなものを見ると神経に負担がかかるので、少しずつ慣らしていくんだそうだ。それでも明日には帰ってくるんじゃないか?」

よかった。これで安心して婚約会見もできるというものだ。・・・彼の今後のためにも、結婚までの一連の流れは見せてあげたいと思っている。沢渡くんはどんな人と結婚するのかな? Continue reading “6/6 (月) 23:30 いつもの・・・”

6/5 (日) 23:00 夜の散歩道

舞のご両親と一緒に夕食をとった後、僕たちは夜の街を歩いていた。・・・少し酔いも醒ましたくて。

「高校を卒業してから随分経ったよね。・・・どう?長かった?」

「そんなことない、あっという間だったわ。大学生の時は結婚のことなんて全く考えられなかったし、就職したら新しい環境に慣れるので精一杯で、でも少し慣れてきたと思ったら更なる仕事が上から渡されて、バタバタしているうちにこの春を迎えてしまったという感じよ。でも私としてはできる限りのことはしたつもりだから、悔いはないわ」 Continue reading “6/5 (日) 23:00 夜の散歩道”

6/4 (土) 0:30 電話

そして他にも連絡しなければならない人たちがいる。

「もしもし、夜遅くにすみません。響です」

“で、殿下ですか?・・・こんばんは”

「こんばんは。今いいかな?」

沢渡くんがお世話になっているクリウスの面々にもいい知らせを届けておかないと、と思って、兼古くんに電話をかけた。 Continue reading “6/4 (土) 0:30 電話”

6/3 (金) 16:00 溝

結城から連絡があり、手術が無事に終わったとのことだった。

「沢渡くんは見えるようになったの?」

“客観的には機能しているということだが、沢渡が目覚めるまではまだ安心できない。それに、休んでいた回路が正常に戻るまでには、しばらく時間がかかるかもしれないとのことだ。でも、手術としては成功したそうだよ” Continue reading “6/3 (金) 16:00 溝”

6/2 (木) 21:30 公私

沢渡くんは明日手術を受けることになった。それを聞いて、加藤だけには任せておけない、と結城も出かけてしまった。

ロマノ共和国との関係は特にこじれていない。元を正せば誰のせいというわけでもないのにもかかわらず、ロマノ側からはお見舞いの金品が少なからず送られてきて、また沢渡くんにワインを飲ませた経済流通長官からも、個人的なお見舞いの品が贈られてきた。しかしそれらの処理はすべて沢渡くん抜きで行っている。沢渡くんはまだ表舞台には出ていない人間だ。だから事を荒立てないように内密に、そして本人同士の責任は問わないことにした。 Continue reading “6/2 (木) 21:30 公私”